民主党年金改革案、どこをどう改革するのか?(その10)
★民主党の年金改革案、志は誠に立派なようだが、どこかあやうく、あやしくなってきた。2004年から2006年、民主党や自民党の年金問題に関心のある先生方と何度か意見交換の機会をもった。その際、皆さん、国家でそんな巨額な資金運用はいかがなものか、と言っていたものだ。ところが、あぶりだされる民主党の年金改革、資産運用論議に怪しい影が見える。その象徴が総務相原口一博氏&総務省顧問山﨑養世氏ラインによる「収益追求」「ソブリン・ウェルス・ファンド(SWF、政府系ファンド)で運用」「プロフェッショナルによる運用」である。投資お馬鹿さんの火遊び、かつ新たな運用利権組織を作るだけのことだ。
ならば、公的年金120兆円の運用はいかにあるべきかを考えておきたい。
ここでは「考えるヒント」だけでも提案。
★120兆円でも資産運用のあり方は個人も国家も同じである。
運用基本方針、運用組織、投資行動をどうするかを考える前に、家計に置き換えて考えてみたい。
毎年収入370万円、支出が900万円、赤字が年間530万円、累積債務が9000万円の家計である。
唯一あるなけなしの退職金1200万円、国内債券67%、国内株式11%、外国債券8%、外国株式9%、短期資産5%に分散しているが、この2年間はマイナス運用である。
今や瀬戸際の家計、夜逃げ寸前の状況である。
破綻家計の資産運用はどうあるべきなのか、まずはそこから考えるのがフツーである。
退職金の運用失敗、損失の補てんは家計が負う。
ところが運用損失リスクを補填できる家計ではない。
リスク許容度をどう決めるかは、年度の収支とバランスシートから考えるのがフツーである。
★年金財政の過去分の債務500兆円、厚生年金収支は赤字である
公的年金の積立金約170兆円といえどもそのうち厚生年金の積立金は約120兆円である。厚生年金のバランスシートは、過去分(現時点の加入者分と受給者分)の給付債務は720兆円。資産は約120兆円と見込まれる100兆円。その差額500兆円が積立方式年金では積立不足と認定される。現行厚生年金は賦課方式だからこの積立不足は現役加入者の将来の保険料で賄わなくてはならない。
★ならば、保険料収入-給付支出=収支差(()内は積立金残高)の過去5年の推移をみてみよう。単位は億円。 直近データH20年までである。財政はこれから火の車になる可能性大である。
H16年度 349,285-326,118=23,167(1,382,468)
H17年度 396,838-376,068=20,770(1,403,465)
H18年度 337,912-343,975=▲ 6,063(1,397,509)
H19年度 255,690-351,451=▲ 95,761(1,301,810)
H20年度 225,678―361,078=▲ 135,400(1,166,496)
※()の積立残高は時価。
上記の破綻家計と同じよう、年金財政それ自体でも運用リスクをとれる財政ではない。
★年金積立金は「給付ファンド」である
これまでの加入者の年金既得権としての年金積立金である。
現在と将来の給付にまわるものである。年金給付約30兆円として4年分である。
決して資産超過になっているものではない。アンダーファンディングなのである。確実に将来の保険料収入が細る状況では、リスク運用などできる状態ではない。
★せめて見習うならばせめて米国公的年金の運用姿勢である。
民主党は年金改革の姿をカナダやスウェーデンにもとめているようだ。
また、「ソブリン・ウェルス・ファンド(SWF、政府系ファンド)で運用」を掲げる総務相原口一博氏&総務省顧問山﨑養世氏ラインは、恐らくノルウェーの政府年金基金の運用体制に憧れている節がある。
しかし、カナダやスウェーデンの国家財政は健全でそれぞれ国債の信用格付もトリプルA。ノルウェーの政府年金基金の原資は北海油田から余剰資金である。
米系の運用会社は日本の公的年金にリスク資産を売っている。しかし、自国の公的年金は「非市場性財務省証券」での運用である。すなわち市場で売買できない米国国債である。それはそれでリスクは高まりつつあるが、巨額な国家の運用資金、金融市場への影響を回避した保全方法は、金融資本市場の中立性を担保する。
なにがなんでも公的年金の資産運用やりたいならば、菅財務相はせめて日本版「非市場性財務省証券」でも考案したらいかがであろうか?
★厚生年金積立金約120兆円は加入者、受給者のものである
国家に託した年金である。その積立金は加入者である国民のものである。
民主党年金改革案のうち厚生年金は「所得比例年金」に改革することになっている。
新制度前の年金は旧厚生年金で計算、新制度発効後は「所得比例年金」で計算となる。
「所得比例年金」は保険料積立と年金額が「対応」する制度というふれこみである。
これを「みなし掛金建て年金」と呼ぶ、ある種の疑似積立方式の年金である。
各人の年金口座、個人別年金勘定を設定することになる「はず」であろう。
個人別年金勘定の資産運用となるならば、運用手法と商品は個人の選択に委ねるべきである。
それを今さら、「ソブリン・ウェルス・ファンド(SWF、政府系ファンド)で運用」など言い出す民主党原口一博氏は、制度改革の本質をわかっていない。
★制度改革時には、各人の過去分の年金積立按分額を示してほしいものだ。
「ねんきん定期便」には各人の保険料納付額の本人負担分の累計額が記入されている。
「あなたの過去分のこれまでの保険料納付総額は○○○○万円」「現在の積立金約120兆円のうちあなたの分は○○○万円、後○○○分が積立不足」「この積立不足はあなたの御子息御令嬢が今後賄います」とか・・・
★資産運用の商品は各人の選択に委ねるべきであろう。
国家も年金財政もリスク許容できる「状態」ではない。個人なら「郵便貯金」か「積立定期」が正しい道である。
「環境、食糧、水」や「インドや中国?」などの収益追求のリスクを負えるような身の丈ではないのである。どうしても投資したいなら、山﨑養世さん、ご自分のお金か確定拠出年金(DC)ででもおやりいただきたい。
★加入者、受給者、個人にとってはそれぞれリスク許容の度合いは違う。
公的年金資産運用を究極的には個人の選択に委ねる。
個人にそれぞれ次のような運用コースから選択していただく。
例えば、こんなコースが考えられないだろうか?
「国債お任せコース」「ノーペイオフ定期預金コース」「元本保証付生保一般勘定コース」「TOPIX連動ETFコース」「お米配給券付郵便貯金コース」などなど。
公的年金の積立金は日本経済の成長の寄与してきていないと奇妙なことを言う総務省顧問山﨑養世さん、これなら究極の資産の分散、日本経済成長の柱となるべき金融資本市場の金融産業の活性化にならないだろうか?
いずれにしても、加入者の財産、なんの断りもない政府による政府のためのリスク運用はある種の資産簒奪ではないか。
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