★年金財政をどう読むか?守旧派は「危機的状況にない」と断言する。改革派はすでに実質赤字財政、税金投入と運用収益頼みの財政ではないかと疑問を呈する。ところが、年金財政の数字、さまざまな数値が入り乱れ、何を元に検証すればいいのか人々を迷わす代物である。守旧派週刊東洋経済は「簿価ベースの収支残は黒字維持だが、市場変動により、株式等の評価損益額を含めると赤字になった」と、04年(H16)~07年度の過去4年の収支決算を(同誌10月31日号・P69の図キャプション)評価する。この黒字維持の根拠は「簿価」である。しかし、年金財政は市場運用を制度維持の重要なファクターに埋め込んでしまった以上、「時価」決算で評価するのが正しい。
★厚生年金、国民年金、公務員・私学職員の共済年金、公的年金財政全体の収支決算は、本誌ブログ09年8月12日号で「28兆-44兆=▲16兆円、年金財政の現実」でとりあげた。公的年金のうち全制度共通の基礎年金も含めた財政状況は「約28兆2029億円の保険料に対して、給付費は約44兆7338億円、その差額は▲16兆5000億円の赤字である。公的年金は「社会保険料方式」といわれる割には、保険料収入で63%しか賄い切れていない制度なのである」と記述した。
★ところが、現行制度守旧派が「現状の少子高齢化でも財政がバランスしている現行制度」(同誌10月31日号・P79)と誇らしげにいう。しかし、本当の財政収支はどうなっているのか?
★公的年金のうち、全制度共通の基礎年金の最大のスポンサーである厚生年金財政が肝心である。社会保険事業運営評議会(目白大学教授・宮武剛座長)が10月20日開かれ、「平成20年度事業実績報告書」が公表されている。
その直近のデータから収入-支出=収支差(積立金残高)の過去5年の推移をみてみよう。単位は億円。
H16年度 349,285-326,118=23,167(1,382,468)
H17年度 396,838-376,068=20,770(1,403,465)
H18年度 337,912-343,975=▲ 6,063(1,397,509)
H19年度 255,690-351,451=▲ 95,761(1,301,810)
H20年度 225,678―361,078=▲ 135,400(1,166,496)

★過去5年の累損だけでも、▲ 19兆3,287億円にいたっている。
厚生年金の積立金は急激に劣化している。
現行の年金制度の「財政がバランスしている」ようにみえてきたのは、この積立金から運用収益に負うことが大きいのである。
すでに、夕陽のギャンブラーの家計のようになってしまった厚生年金財政である。どこが「財政はバランス」しているのか?守旧派の論客たちは節穴なのか?
年金お助けBOOK 2008-2009年版
適格年金のやめ方