★民主党年金改革案はどこか暢気なところがある。
その暢気さは、年金受給者の負担を軽減し、高齢者の生活の安定を図るために、減税措置を公約しているところにある。
「本来マニフェストには、年金受給者世代を中心に国民の耳に痛い内容が含まれていなければならない」と民主党年金改革案に危惧を表明しているは、日本総合研究所調査部主任研究員・西沢和彦さんである。中央公論09年12月号の特集「年金は甦るか」にある「民主党はこのまま将来世代にツケを負わせるのか」という論文である。
★民主党年金改革案マニフェストにある年金受給者減税案は2点。
①公的年金控除の最低補償額を140万円に戻す。
②老年者控除50万円を復活する。
★西沢和彦さんの危惧の中心は次の点である。
「民主党マニフェストに、将来世代に財政的ツケを負わせている状況への危機感は乏しく」
「これらは(上記①②)、04年の年金改正時、基礎年金の国庫負担割合の引き上げ(筆者注:3分の1から2分の1)財源に一部充てる目的で引下げおよび廃止されたものである」
★2009年時点での年金額の非課税限度額の目安は次の通りである。
①単身者65歳未満:年額108万円、65歳以上162万円
②配偶者がいる65歳未満:年額156万円、65歳以上201万円
★現行の年金制度を抜本的リフォームとなれば、まずは高額・中額年金受給者の年金をどこかで抑制する手法がともなうものだ。
すでにうけている年金額を抑制するには、制度それ自体の内部に抑制装置を設置するか、税金で調整するか、その両方で抑制することが常道である。
2004年の年金改正では、前者はマクロ経済スライドという「自動抑制装置」を導入、後者は先の税制改正であった。
★ただし、このマクロ経済スライドという「自動抑制装置」は評判すこぶる悪い。社会保障的な年金である基礎年金にも、現役賃金変動、物価変動、さらに平均余命と被保険者数などのパラメータの変動で誰もが理解不能な複雑怪奇なロジックで抑制することについては改正当時に疑問があったものだ。
そんなことだから、「その4年半後の08年12月、麻生内閣で閣議決定された社会保障と税制改正の中期的道筋である『中期プログラム』において、基礎年金への上乗せ給付新設などが提案」(西沢論文より)される始末であった。
★年金受給者の場合、他の所得、資産、年金などあわせて累進的に課税強化していくことで、負担の公平性を保つ手法の方が最もシンプルである。ところが、民主党年金改正案ではこの逆をやるという。この真意はどこにあるのか?恐らく、将来の消費税引き上げへの対応処置と勘繰りたいが、今のところ、よくわからないのが実情だ。
★なお、西沢和彦氏には「年金制度は誰のものか?」(日経新聞発行・08年4月発行)という著書がある。それほど、多くの若い人が読んでいるとはおもえないが、現行制度守旧派の週刊「東洋経済」は、同著にある「世代間不公平論」は、「若い世代の年金不信を高めたばかりか、若年世代が高齢世代を敵対視するような風潮までも生み出した」(週刊「東洋経済10月31日号」)ものの「一つ」として八つ当たりしている。
★1965年生まれの西沢和彦の氏世代の年金支給は、65歳支給に引き上げられ、さらに老齢厚生年金の支給率も氏の前世代の1000分10から1000分の5.481にまで引き下げられてきた。保険料負担労使総額で、前世代の6%前後から今や18.3%、さらに03年からは賞与にも保険料徴収となってきた。
★西沢和彦世代が「世代間不公平論」を抱くのは自然である。それゆえに、この世代が、せめて、お爺さん、親父の年金水準だけでも「ほどほどにしてほしい」と願うのも自然である。
そもそも、世代間不公平感を熟成させてきたのは、年金改正のたびに、「もうこれで最後だから」と大見得切ってきた政治と年金行政に問題があるのである。
★現行制度守旧派の週刊「東洋経済」は、「後世代が享受する社会インフラ等も、主に前の世代の負担で整備されたものだ」「充実した教育、住宅所得支援、相続を受けている傾向が強い」から、年金の西沢「世代間不公平論」は「間違った」と言う。
★お前が学校へ行けたのも誰のおかげだとおもっているのか。立派な会社に入れた、今住む家も誰のおかげだ。今使っている高速道路も誰のおかげだ。俺たちの年金は貰い過ぎ?つべこべ言わずに、年金保険料も税金も払うのは当然だ。逆に感謝してもらいたいものだ。どこかの親父の世代の説教みたいである。
要するに、現行制度守旧派の週刊「東洋経済」の論調はこういうことである。こんなこと言っているから、若い世代は年金嫌いになってしまうのである。
★さて、民主党年金改革案、この「世代間不公平」感どこまで手をつけるのか?この点も注目していきたい。
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