★欧米企業年金では相次いで制度の廃止、給付減額が進んでいる。その現況を報じたのは6月17日の日経新聞、ロンドン支局の吉田ありさ記者のレポートであった。同紙から、英国と米国の企業年金の最新動向、併せて、日本の企業年金救済法である「企業年金弾力化措置法」のポイントも整理しておこう。
★英国の大手銀行バークレイズは、年金財政が急速に悪化、08年秋に22億ポンド(約3600億円)の債務超過となった。そこで97年以前に入社した社員約1万8000人の年金を削減する制度変更を決定。利率固定の確定給付年金から利率変動の年金(恐らくキャッシュ・バランス・プランであろう)とした。
★「英国7400の企業年金の積立不足額は5月末で1968億ポンド。前年同期は510億ポンドの黒字」(同紙より)
★アイルランドに本社がある陶磁器「ウエッジウッド」のウォーターフォードは09年1月に倒産。年金資産の残余財産の分配を年金受給者優先で実施した。企業年金の積立不足のため、約1800人の現役加入者の分配金がゼロとなった。
★英国の年金コンサルタント曰く、「企業年金赤字は米英とオランダ、スイスで特に深刻」。
★米国の倒産企業の企業年金を支払い保証する政府の年金給付保証公社(PBGC)の09年3月末の積立不足は335億ドル(約3兆3500億円)。今後、ゼネラル・モータースや自動車部品会社などの破産でPBGCの債務はさらに膨張する。
★米国の運輸大手フェデックス、通信機器大手のモトローラは確定拠出年金(DC)への掛金拠出を一時停止。
★OECD(経済協力開発機構)発表によると、「先進30カ国の私的年金(個人年金を含む)の運用資産は08年に全体の約2割、5兆ドル減った」(同紙より)。日本円で約500兆円ということになるから、ほぼ日本のGDP1年分が吹っ飛んだことになる。
★日本では現在、「企業年金弾力化措置法」が国会で審議中である。確定給付企業年金と厚生年金基金、この両制度の財政悪化への救済策といわれている。実際は大幅赤字の先送り策である。09年3月末で年金財政上の積立水準に達していない厚生年金基金は全体の8割、確定給付企業年金は全体の6割といわれている。
★日本の企業年金救済策は、3点ある。
第1点は追加掛金の拠出を最大2年間凍結できる。
第2点は追加掛金による財政回復もある水準まででよく積立不足の先送りを認める。
第3点は厚生年金基金の解散にともなって、国に返還する「最低責任準備金」の計算には直近の利率を使って計算(要するに少しまけてやりましょうということ。ただし厚生年金の本体は損することになる)。
★今から10年前の1998年頃、欧米企業の年金担当者と意見交換をしたときである。当時の日本で進む「企業年金の給付減額」について話が及んだときだ。米国のさる大手コンピューター企業の担当者、筆者に向かって、「日本のやっていることは信じられない!米国でやったら訴訟の嵐、英国ならば経営者はプリズンに直行」と言っていた。
2009年の世界同時、企業年金マネー暴落。時を越えて、欧米企業もついに給付削減に手をつけはじめた。09年度中に歯止めがかかるのか、さらに債務膨張、給付削減、制度廃止は大きく進むのか。
世界の企業年金、目を離せない正念場を迎えている。
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