★政府管掌健康保険の県別格差保険料制度は09年10月から実施の予定である。当然と言えば当然のことであるが、すこぶる評判が悪い。永年の悪しき年金制度運営に対する批判。そこで国民の怨嗟回避策として自公連立内閣が考案した社会保険庁解体。そのどさくさに厚労省―社会保険庁官僚は、旧政府管掌健康保険を「協会けんぽ」という独立行政法人移行をまんまと手に入れた。この新組織の最大の仕事は、健康保険料率の地域格差を導入することにあった。その目的は、疾病抑制と負担の競争原理導入というのは表向きであって、その本音は、「全国健康保険協会=協会けんぽ」という政府や政治家の監督がいきとどかない官僚天下り組織による厚生官僚の医療保険利権の拡張、再編成である。
★「協会けんぽ」と「年金機構」、2つの出先を手にした厚生官僚群にとって、これほど安心な天下り先はない。いつも、日本の官僚は火事場泥棒のように自らの利権を確保し、そこに、新たな利権を嗅ぎつける政治家が後押しをするのが日本のお寒い社会構造である。結果、高いコストを負担するのは国民である。
★09年10月からは、最も高い北海道は8.75%、東京都は8.04%、最も低い長野県は7.68%となるという。これでは、国民の大きな不満が沸騰するので、5年間は激変緩和措置を講じる。そのために、1月28日、政府自民党に厚労省は、緩和措置4案を説明したわけだが、その4案のどれをとっても、上限と下限の差をいじっただけの小手先の話である。
★中小企業の労使を対象にした健康保険制度は、その負担と給付は全国一律が当然の原理である。それを破壊する理由は、なにもない。
★そもそも、健康保険の運営代行である大手企業の健康保険組合、国民健康保険の市区町村の運営、今はどれもが大きな赤字、保険料の格差に苦しんでいるのが現実である。小さな母数の集団でまかなう健康保険制度そのものが成り立たなくなっているのである。
★長野県がなぜ医療費を抑えられているのか、北海道がいかに困難な医療事情にあるのか、こうした医療サービスのコストパフォーマンス不均衡の要因とその歴史は、厚生官僚が最もよく知っているはずである。北海道にメタボが多いわけでもなく、長野県が全国一健康な人が多いわけでもない。たまたま北海道に住んで働いたからといって、全国一高い健保保険料を払ういわれはない。健康保険の社会保険方式は、全国規模の運営で母数が大きければ大きいほど制度の安定度は高まるのは常識である。
★疾病対策、診療抑制、レセプトの点検は、政府管掌健康保険では、社保庁の仕事であった。過去、80数年にわたって巨額な費用をつかって健康保険事業が繰り返されてきた。各地に政管健保の保養所などを作って天下り先を増やしたりしてきたものだ。旧来の健保行政の健康管理指導、これがまったく功を奏してこなかった。なぜか?社会保険庁の役人に、今日の健康、安定した健康保険財政の維持をはかることにインセンティブが働いてこなかっただけである。健康保険財政と中小企業の被保険者の健康増進に血眼になって働いている社会保険庁の職員に、まずお目にかかったことがない。
社会保険庁組織の人事的インセンティブは、滞納保険料の偽装全喪による記録改竄、徴収率偽装による昇格、出世だけであった。係長から課長、次長、所長、課長補佐、そして外郭団体である健保組合や厚生年金基金の常務理事への天下りへの夢しかなかったのである。
★筆者の見解はカンタンである。社会保険庁の医療保険担当者に、担当地域別に保険給付と保険料収入のバランス維持を課し、それを達成した者に報償を払う。さもなければ、それを請け負う医療サービスと保険運営ができる民間会社に業務委託する。それでも、バランス維持ができない地域なり企業があれば、地域の医師、保健指導員、企業の社会保険委員などと組んだ地域・企業・家族への健康管理指導の徹底しかないのである。要するに、健康保険制度の財政基盤の強化に欠けているのは、健康ソフトウェアの充実なのである。
★きめ細やかな行政サービスとコスト管理ができない自らの無能を棚に上げて、県単位で負担する保険料を競い合わせるとすると、企業も人も、その県から逃れることになるのは火をみるよりもあきらかである。今回の健康保険制度が実施されるとなると、北海道で事業をおこし、多くの社員を抱えることはきわめてハイコストの地域と決めつける恐ろしい政策である。
★日本の医療保険制度の効率化、サービス向上に関する国民的議論、未だ成らずである。「協会けんぽ」、一度白紙に戻し、広く、国民に問いかけるべきである。
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