★その国の年金制度を抜本から変える力は、極めて独裁的な政治リーダーか、明察に富んだ政治家達によるオープンな情報公開か、どちらかによってしかできない。このことは、年金の歴史が証明している。前者はチリやシンガポールの年金改革であり、後者の例は最近ではスウェーデンがそれにあたる。
マスメディアである新聞社がその改革を世論誘導した例はみたことはない。あるとすれば、過去の日本の年金改革の際、新聞各紙がとってきた官僚主導政策への迎合であった。
12月8日の日経新聞は、自社の年金制度改革研究会の二次報告を一面トップに、「厚生年金、若者の不利改善」というタイトルが踊る。
★厚生年金の保険料のうち2017年の最終保険料率18.3%、そこから国民年金保険料相当分5.3%分を引き、厚生年金給付水準を2割引き下げ、さらに1.5%を引いた11.5%にする。その中の1.5%分は個人単位にした完全積立の年金にするというのが、日経版厚生年金改革案である。
★すでに一次報告で国民年金の全額消費税方式を提唱した日経年金改革案である。国民年金保険料相当分は本人も企業も直接負担することがなくなるのであるから、「企業負担は年3兆7000億円浮く。そのなかから部分積立の原資を出せるはずだ」というのが、企業への最大の説得材料としている。
★しかし、厚生年金給付水準を2割引き下げに若者までが納得するかとなると、日経厚生年金改革案では、「一階部分(国民年金の基礎年金)現行制度より充実する」から大丈夫と言う。
その額は、6万6000円を維持ということだから、現在の40年加入の満額値と同じだ。
★厚生年金の2割削減となると、現在の平均的な厚生年金額約8万円程度が約6万4000円程度となり、国民年金の老齢基礎年金6万6000円で65歳から約13万円ということになるわけだ。単身者には辛い年金額だが、妻40年専業主婦の夫婦者の場合で日経厚生年金改革案のモデル年金額は、約19万6000円ということになる。
★国民は年金に関心あれども、すでに白けた状況にある。「ねんきん特別便」は来たけれど、これが本当に正しいのか否かも、理解しようがないことがわかり、「こんなの関係ない」という人も少なくない。
★経済専門の一新聞社が、メディアとしての公平性もかなぐり捨てて、一つの年金解決策を提唱するところまで踏み込んでしまった。日経厚生年金改革案は2010年初頭には実施できるように「する必要」があるとまで言い切っている。これは、もう新聞メディアの発想ではなく政党である。
これまでの日経記者と厚労省官僚達の仲良し倶楽部的情景を知っている者としては、この日経厚生年金改革案も、どこかで厚労省年金官僚と通底した「出来レース」なのではないかと、勘繰りたくもなる。
しかし、これもひとえに日本の政治家達と官僚達の衰弱に対する義憤なのであろう、と今はその憂国の真情を信じたい。
今の我が国の年金制度がこのままで良いはずはなく、日経年金改革案、それ自体は、抜本改革というより段階的修復であるが、今や「日本の常識」になりつつある。
しかし、日経新聞に言われるまでもなく、国民が自らの家族、その子供たちの未来を洞察して、年金の未来を真剣に考える季節は来ているのである。それを先延ばしているのは、これまた政治の怠慢なのである。
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