★賢明な妻、働き者の妻には感謝しなくてならない。過去、幾度かの経済危機のなかで繰り返されてきた大失業、リストラ時代、亭主の失職も妻の頑張りで乗り越えてきた現代「夫婦善哉」のいくつかを紹介したい。
阿部さん(仮名)は、1997年のY証券会社の社員だった。突然の経営破たんに遭遇。再就職の相談を受けた時の会話である。
「金融機関を幾つか渡り歩いてきた身だから、こういう危機は想定内。若い頃の亭主の失業、転職を経験しているので女房もシッカリしていて、今でも保険会社のセールスをやっている。食べていくだけなら、女房の収入でなんとかやっていける生活スタイルにしているので、給与は半分ぐらいになってもそんなに困らない」と。
その後、運よく某信託銀行に再就職したが、再び、失業しても、ご本人は金融マンというより学者風なタイプのまま、その姿、飄々と泰然としていた。
それを支えていたのが、奥様の保険セールス・ウーマンの頑張る姿があると思うと、阿部さんのしたたかな「夫婦戦略」を感じいった次第であった。
11月19日、自動車製造業、大手I社の夫婦参加のライフプラン研修に年金制度講師に招かれた。期間工・派遣労働者のすべてを12月末で雇用終了するという前日のバッド・ニュースが報じられた翌日であった。
ひと通りの講義が終わって帰り支度をしていたところにひとりの婦人が、「あの、よろしいでしょうか」と声をかけてきた。
「このままでは、大変なことがよくわかりました。現在の私の手取り数万円ではだめだ。今からもっと稼げる仕事を探すことにしました。今の会社を辞めて、求職活動をしている間、すぐに雇用保険はもらえますか?」との相談であった。大企業に勤める夫であっても、妻は厳しく現実を見据えている。
「今の会社を辞めてから、新たな仕事を探すより、働きながらさがす方が賢明ですよ。雇用保険は自己都合は3ヵ月の待期があり、すぐにはでませんから・・・」とアドバイスしておいた。
ご主人はというと、再来年に定年退職という。こういう妻がいる限り、夫の失職、定年、収入減があっても、なんとかやっていけるものだ。
どこの家庭でも、元気で働き者の妻は、なにがあっても怖くない。もちろん、夫にとっては、なによりも「怖い愛妻」でもあるが・・・・。
ダブルインカム・ノーキッズ、子供なし共働き夫婦は、リストラにも長期ライフプランにも強い。しかし、この強さは、夫婦とも安定した会社に勤め、夫婦年収の合計が1500万円以上あっての話である。
このクラスだと、現在40代半ばで金融資産3000万円強、夫60歳定年時のキャッシュフローは8000万円から1億数1千万円以上という例をライフプラン研修ではよく見かける。夫婦の年金も国と企業年金で合計月約50万円以上ということになる。
こういうリッチな夫婦に会うと、2008年のノーベル経済学賞のポール・クルーグマン教授が、こんなことを書いていたこと(論文名は忘れたが)を思い出す。曰く、「年金制度の拡充は、人々から子供を産むインセンティブを奪うというパラドックスにおちいる」。しかし、多くはこうしたハッピー・ゴー・ラッキーな夫婦ばかりではない。
30代後半の女性、小島さん(仮名)から受けた相談である。
自分の給与年収は手取り350万円、夫は40代で年収250万円前後のフリーの派遣契約社員という。夫婦の合計年収は約600万円。
「夫は子供が欲しいという。しかし、夫の仕事はこれからも報酬が上がる見込みがない。子供ができれば、今の会社は辞めざるをえない。育児休業制度はあるが、とれる雰囲気ではない。会社はいまや超低空飛行です」「大不況時代が続くと、夫の派遣労働はもっと厳しくなりそう。いつ仕事がなくなってもおかしくない稼業。子供ができ、私が失業となると、これは極貧そのもの。なにか、生活を安定させる方法はあるものですか?」
結論は、はなはだ、情けない話ではあるが、「解はない」のである。収入を上げる努力、支出を抑える倹約を諭すことは簡単である。問題は、この希望からの疎外状況をどう捉えるかにあるが、今は、その状況はひときわ際立ってきている。
ただ、こうしたケースで、敢えてアドバイスすることがある。
1.「一人扶持は食えないが、二人扶持ならなんとかなる」という古来の教えは正しいこと。
2.明日はどうなるかを心配することはやめよう。「今日」を生き抜くこと。
3.ともかく、「預貯金」を増やすこと。そして、今は使わないこと。
さて、小島さんである。聞けば、預貯金残高は数千万円という。年間の生活費は月20万円、年間240万円、残りは全部預金というからその堅実ぶりは、お見事につきる。小島さんの場合、「生活を安定させる方法」は、倹しく生活を統べていく自らの生き方にあったわけだ。
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