★姜尚中著「悩む力」(集英社新書)のなかに、ニンマリと笑ってしまう一文あり。「老人力」とは何かと問われたら、『撹乱する力』であると私は答えたいと思います」。老人とは『撹乱する力』の方向とは?姜尚中先生は続ける。「社会の安全弁などには、おそらくならないでしょう。『老人は権威によりかかる』とか、『老人は保守的である』とか言われてきましたが、今後はそれも当てはまらなくなる可能性が高いのです」「もしかするとアナーキーなほうに向うのではないかという気も少ししています」。いいえ、姜尚中先生!老人力、撹乱する力のアナーキー化?はすでに始まっているようである。
筆者の休日は、朝8時半から昼過ぎまで近所にあるテニス倶楽部で5本程度のゲームをやって過ごす。日本中の古くからあるテニス倶楽部は今や超高齢社会である。男女ともども平均年齢はとうに65歳を超えている。筆者が通うテニス倶楽部もその例外ではなく、最高年齢は93歳(K大OBの元全日本チャンピョン)の長老である。筆者ら若手(?)はいつも老練な技巧と絶妙な口舌を駆使する平均年齢70歳の老人力に撹乱され、5本やって3本か2本勝つのがやっとである。そして、なぜか、身も心も疲労困憊の我が身である。ところが、老テニスプレーヤー達は、意気軒昂。お昼はビール大瓶一本を呑み、カレーライスを平らげ、午後の試合に挑むのだからもう化け物である。「今の自分達は年金のお陰、こうして毎日(本当に毎日なのだ!)テニスをやれるのも若い者のお陰」と謙虚さは忘れていないが、若い者を翻弄する時代は終わりそうもない。
2008年の夏が過ぎ、世界の金融危機、株価暴落、老テニスプレーヤー達に異変の兆しが窺える。
まず、仕事を探し始めているのである。なんでもいいから「人間、仕事をしなくてはいけない」とのこと。なぜか、筆者の家の草むしりをどうしてもやってくれると言うのである。これまでは、冗談に「暇なら草むしりを手伝ってよ」と言ってもとり合ってくれなかった方々でもあった。実際に草むしりに来るとしても、これはこれで結構恐いものがある。不吉な予感がする。
2点目は、撹乱的にかつ電光石火、堅実路線を走り出している。テニス倶楽部では、なんと自転車、ウオーキングが増大。しかし、お昼のビールは止めていない。
3点目は、投資から預貯金へ。さらにはメガバンクから地元名門堅物信用金庫に資金移動。どこかの投資顧問の社長氏は個人の金融資産1500兆円の約60%は老人のお金、このうち100兆円でも株式投資にまわれば景気回復は簡単なものと言っていたが、残念ながら、はかない夢のようだ。
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