★我々はきわめて興味深い状況にいやおうなく直面させられている。現在ある危機は、金融システムの崩壊への恐怖でもなければ、どうやら基軸通貨米国ドルの暴落、ドル危機にあるようだ。
今週28日、ブッシュ大統領政府が与野党の合意をとりつけたかにみえた金融安定化法案、公的資金75兆円でサブプライムローン債権商品の不良資産を買い上げるスキームは、翌29日米議会下院であえなく逆転否決。ニューヨーク株式市場の終値は過去最大の下げ幅777ドル(下落幅7%)を記録。日経平均株価は4営業日連続の下落は止まらず、前日比483.75円安の1万1259円、と年初来の最安値となった。
マスメディアは、「1929年の株価大暴落以来の深刻さ」とか、「100年に一度あるかないかの金融危機」とか報じるが、本当であろうか?
1990年から2000年までの日本版金融危機、アジア通貨危機を目の当たりにし、かつ、体験的に金融危機に一敗地にまみえた身からすると、現在の金融危機は、いつでも、どこでも、常に起こりえるグローバル市場経済の宿痾と観念しておいたほうが良いようだ。
そこで、この際、読書の秋、昔の本であるが、こういう経済の阿鼻叫喚の最中に読み返しておきたい本をご紹介したい。
経済学者・岩井克人先生の「21世紀の資本主義論」(現在、ちくま学芸文庫から文庫版ででている)である。2000年に上梓されたもので、1990年の日本版バブル経済の崩壊、97年のアジア通貨危機をふまえ、「貨幣」の構造を解き明かし、21世紀の金融危機を素描したものだ。現在の金融危機を論理的に考察するにはまたとないテキストである。
平均株価や金利、為替の情報をTVや新聞、ウエッブサイトで毎日毎時接する。そうした情報を創り出すマネーとは何か?本書から幾つかのエッセンスを引用。
「21世紀のグローバル市場経済においても、金融危機はくりかえしくりかえし起こることになるだろう」という、金融の血液と呼ばれるマネーの正体は?
「ひとびととの欲望とは永遠に振れあうこともなく、その欲望をたんに媒介していくだけだからこそ、モノとしてはたんなる金属片や紙切れや電磁波でしかない貨幣が、モノとしての価値をはるかに上回る価値をもつことができるのである」
「貨幣の貨幣としての価値を支えているのは、まさに『予想の無限の連鎖』そのものなのである」
「具体的なモノの有用性などよりも、まさにその『予想の無限の連鎖』の存続を信頼しているということである。すなわち、それは、いま貨幣として受け入れてくれる現存の市場経済の永遠性にたいする、信頼の表明とみなすことができるのである」
「それでは、市場にとって真の危機とは何なのだろうか?」
「もはやあきらかだろう。グローバル市場経済にとって真の危機とは、金融危機でもなければ、それにつづく恐慌でもない。ハイパー・インフレーションである。そして、グローバル市場経済におけるハイパー・インフレーションとは、もちろん基軸通貨ドルの価値が暴落してしまう「ドル危機」のことである。それは、基軸通貨としてのドルを支えているあの『予想の無限の連鎖』の崩壊過程にほかならないのである」
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