★米国発金融危機は泥沼の様相を示してきた。
9月25日、米貯蓄金融機関(S&L)最大手のワシントン・ミューチュアル(ワシントン州)が経営破綻し、米大手銀JPモルガン・チェースによって買収となり、とりあえず全預金は引き継がれた。
9月15日未明の米国証券業界4位のリーマン・ブラザーズ経営破綻。翌日16日は、世界最大の保険会社AIGが経営破綻、事実上国有化された。9月23日には、米国証券業界最大手モルガン・スタンレーが三菱UFJ銀行に資本増強のために出資を要請。米国経済はどこに行くのか?
誰もが想定していなかった米国経済の危機の現在であるが、圧倒的優位をほこっていた1998年の米国を思い出してみたい。
1998年当時の米国では、ニュー・エコノミー論がもてはやされていた。
立ち止まることない経済成長、企業収益の増大、上がり続ける株価。経済の景気と不況の循環論は古い経済学であって、21世紀経済はグローバル市場経済の拡大、さらにはインターネットが創造したサイバー経済に移行し不況もクラッシュもない時代を迎えると、ボストンに本社がある某経営コンサルタント会社で聞かされた米国版「ニュー・エコノミー論」であった。
そのコアとなっていたのは、1970年代から始まった情報処理技術と通信ネットワークを駆使して構築された金融工学であった。金利、債券、株式、外貨、石油や穀物や金属の商品は、金融数理の精緻化によって組み合わされた金融デリバティブ商品として開発された。将来の価格変動リスクは巧妙に回避されるはずであった。2000年に入り急速に世界に拡大した。米国ダウ株価はすでに軽々と1万ドル突破していた。米国新興市場のナスダックが3千ドル突破したその日、筆者は、NYナスダック取引所の株価ディスプレーだけの無人の室内にいた。
誰もが気軽に上場することができ、大きな富を約束してくれるはずのNYナスダック取引所。しかし、それはなぜか、空中遊園地の回転木馬を見ているような錯覚をいざなう場所でもあった。
1998年当時、金融市場拡大の牽引役は米国401kであった。クリントン大統領による401k掛金の非課税限度額の1万$までの引き上げは、米国の金融市場をさらに底上げした。
98年春、米国の投資教育の現場へ勉強に行った筆者は、米国HP社の担当者から不思議な話を聞いた。「401kの資産残高を担保に融資をうけて、何件もの住宅投資をしている社員もいる。今、ここシリコンバレーの住宅は高騰を続けているから、そういう人はハッピーだが・・・」
その後、ITバブルが一時崩壊したが、米国の不動産、株式市場は上がり続けた。サブプライムローンで住宅をもった低所得階層でない中産階層の勤労者までが、ローン付き住宅や401kまで担保に金を借りまくって、「貯蓄から投資へ」を実践していたわけだ。
米国発金融危機の発端は、サブプライムローンの証券化商品のデフォルトであるが、その底流にあるのは米国貧困層のはかないアメリカン・ドリームの破綻をもたらした。
しかし、米国の苦しみは、これから本格化するのであろう。
米国中産階層の失業増、ローン返済不能、401k年金資産の縮小、無産化階層への転落という「負のスパイラル」が拡大するのか、ここはしっかり注視していきたい。
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