★先週金曜日、9月19日のブログについて、幾つかの問い合わせあり。
「厚生年金保険法そのものを見直さないと駄目である。記録改ざんが過去67年間、当然のように横行してきたその根本原因は保険者決定という「権力の乱用」、それを担保にしている厚生年金保険法第24条にある、といのが本誌の推定である」という本文中、厚生年金保険法第24条についてである。
まず、法令を見てみよう。法文中にある「第21条第一項」とかいう表現は、理解しやすくするため『』で抄訳内容を入れたことをお断りしておく。
厚生年金保険法第24条第1項
「被保険者の報酬月額が、『算定基礎届による定時決定』(21条1項)もしくは『新規加入の資格取得届の報酬月額決定』(22条1項)の規定によって算定することが困難であるとき、または『算定基礎届による定時決定』(21条1項)、『新規加入の資格取得届の報酬月額決定』(22条1項)もしくは『随時改定の報酬月額決定』(23条1項)の規定によって算定した額が著しく不当であるときは、社会保険庁長官が算定する額を当該被保険者の報酬月額とする」
例えば、算定基礎届や資格取得届、随時改定届の報酬月額が、賃金台帳とあまりにも隔たりがある場合、そもそも届出そのものが誠実になされない場合など、報酬月額を保険者決定しますといことである。それは、1999年3月末までは都道府県知事の職権、1999年4月以降は社会保険庁長官の職権をもって執行するということである。この職権こそ保険者決定の核である。
保険料滞納、保険料支払いが困難な場合、保険料差し押さえによる企業倒産が予測される場合、本来の滞納処分、差し押さえ、競売が法的処置の筋である。しかし、社会保険料徴収業務では、何もとれない差し押さえより、少しでも実入りがある「報酬月額の改定」、滞納保険料の減価、払える保険料だけを徴収することが「御政道」となっていたわけだ。
今回の積年の記録改ざんの本質は保険者決定の「拡大・総合的勘案解釈」のもとづいた権力の乱用である。
健保・厚生年金保険料の計算基礎である報酬月額が「算定することが困難」「算定した額が著しく不当」であると社会保険事務所担当官が判断すれば、保険者決定の核である厚生年金保険法第24条「社会保険庁長官が算定する額を当該被保険者の報酬月額とする」を拡大解釈、まさに記録改ざんは順法となっていた。
保険者決定こそ社会保険行政マンの「伝家の宝刀である」と、戦前から社会保険行政に携わってきた社保庁古老OBから筆者はしばし聞かされた話である。
滞納処分寸前に地元の有力代議士の秘書から電話、「一寸話がある。うちの先生の大事な後援者である会社をつぶす気か!」となると、保険者決定の伝家の宝刀の奥の手、さかのぼり全員喪失という裏ワザの妙手を発動。これをも厚生年金保険法第24条「社会保険庁長官が算定する額を当該被保険者の報酬月額とする」を総合的勘案解釈、社会保険事務所所長も担当官もこれにて一件落着、天下の大岡裁きでもあった。
しかも、保険料徴収率向上という副産物もあり、もうどうにもやめられないことになっていたわけだ。
「地元で生きていくしか術のない我々地方事務官は、こうする以外にないのです」という話を筆者は某県某保険課の課長補佐氏から聞かされた。そう言えば、その県の社会保険事務所は、後年、内閣総理大臣になった方の地元選挙区であった。勿論、電話してきた秘書とは政界ではそこそこに有名になった方の駆け出しの頃であったとも聞いた。
繰り返し言う。保険者決定というシステムこそ社会保険行政の諸悪の根源である。
舛添厚生労働大臣が「かかわったことが分かったら全員解雇する」と意気込み実行するならどこまでできるかやってみればよろしい。社会保険事務所の能力ある者の退職は急増するにしてもだ。
しかし、そこまでやるなら、歴代の都道府県知事、社会保険庁長官、社保庁業務課部長・課長、各県保険課長・課長補佐、社会保険事務所長、滞納保険料をチャラにしてもらった事業主を国会喚問する必要がある。それもしないで、ただ単に末端下級官吏の解雇だけでは公平さに欠ける。
政治家の口利き、上長の監督責任並びに指示があったかどうか、「徹底的に膿」をだしてもらいたいものだ。
しかし、そんなことやってもいたずらに時間と税金を浪費するだけだ。
滋賀県の社会保険事務所の元徴収課長の尾崎氏が言うように、今は一時も早く記録改ざんされた年金受給者の記録回復をはかることだ。同時に、社会保険行政の「保険者決定」を主権在民方式に「変革」することだ。
今週はそこのところを考察してみたい。
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