★滋賀県の社会保険事務所の元徴収課長、尾崎孝雄氏は年金記録改ざんが普及した姿を実名で告発している。朝日新聞9月10日号の記事である。
「00年ごろ、新任の徴収課長を集めた研修会で、改ざん手法が『全国にばらまかれていく』様子を目の当たりにした」「『うちもそれでいくかな』夜の懇親会はノウハウの交換会になったという」。
社会保険行政で滞納保険料を全喪と呼んで一括処理することは、尾崎氏が目の当たりにした2000年頃からではない。
すでに、はるか昔から「伝家の宝刀」として重用されてきた。なぜ、そういう「宝刀」が生まれたのか?
「伝家の宝刀」とは「保険者決定」である。恐らく、この行政執行の手法があるからこそ、年金記録改ざんは多くのフツーの社会保険官吏によって、いとも容易く繰り広げられた。酒席の場でノウハウ交換するところまで普及進化をとげてきたわけだ。
「保険者決定」がすべての諸悪の根源である。
社会保険の保険料決定は通常、4・5・6月の給与の平均給与額をもって、10月から1年間の保険料額を決定する。
各人の平均給与額を30区分ある標準報酬月額等級(最低9万8000円から最高62万円)に当てはめていく。平均給与10万1000円未満は、9万8000円の標準報酬月額、60万5000円以上でも最高等級の62万円の標準報酬月額となる。これを「定時決定」と言う。
そのために企業は全従業員の標準報酬の月額算定基礎届を7月に社会保険事務所、もしくは健康保険組合に提出する。
その際に、賃金台帳と異なる月額算定基礎届を提出した場合、それを提出しない企業の場合、社会保険事務所は「伝家の宝刀」を抜く。
社会保険事務所長が命じることで、そうした「不心得者の企業」の従業員の標準報酬の月額が決定される。この決定を「保険者決定」と言う。従業員や事業主は被保険者、保険者とは厚生労働省。保険者決定とはまさに厚労省による権力の行使なのである。
保険料滞納著しい企業、この先も保険料負担が困難な企業、すでに倒産して滞納保険料の回収が不可能な企業、その場合も「伝家の宝刀」が抜かれる。
差し押さえではなにも獲るべきものがないと判断すれば、滞納開始時までにさかのぼって喪失させる、納付できる分まで標準報酬月額の総額を縮減する。
恐らく、これも「保険者決定」の延長で、官吏達は何も良心の呵責は感じていなかったはずである。
滞納処分の闇取引で記録改ざんしたことによって、被保険者ひとり一人の将来の年金受給権が失われたり、減額されたり、はたまた従業員が負担し企業に預けた保険料が事業主にネコババされることなど、まさに「そんなの関係ねぇ」ということである。
なぜなら、社会保険官吏として粛々と「保険者決定」を執行しただけなのだ。
舛添厚労相は職員の一部による「共同正犯」だ!」と叫んだ。全く的はずれもいいところだ。
「伝家の宝刀」、「保険者決定」が制度として組み込まれてある以上、今後とも厚生年金記録改ざんはなくならいであろう。ならば、どう改革すべきななのか?
ここは、政治家の皆様、特にこの60年間の厚生行政から甘い汁を吸い続けてきた自民党、総裁候補者の皆様には、この対策を聞いてみたい。
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