★今から30年程前のことである。某県某保険課に訪問した時である。
当時の厚生省から出向してきたA保険課長氏が来訪者と大変ご満悦な歓談をしていた。来訪者は本省(旧厚生省)から監査にきた地方課の監察官とのことであった。
なにがそんなに某県A保険課長氏をご満悦にさせていたのかというと、「A課長が来てから当県の保険料徴収率がようやく他府県並になったので、本省からたまたま立ち寄った地方課の監察官も大変喜んでいるわけです」、とその某県某保険課の課長補佐氏が教えてくれた。そして、保険料徴収率向上のテクニックを幾つか御教授いただいた。
すでに、厚生年金記録改ざんは社保庁の年金行政、古く深いところで常態化していたことは、社保庁職員なら知らぬものはなかったのである。
9月9日「年金記録問題に関する関係閣僚会議」、社会保険庁が報告した標準報酬月額改ざん事例は17件、そのうち職員の関与が確認できたのは1件のみという。
社会保険事務所の奥の院である所長室の壁一面に掛けられているのは、まるで生命保険会社の営業所でみかけるノルマ達成成績表のように保険料徴収率の月間成績表であった。
改ざん年金記録による保険料徴収率99.99%、そのパーフェクトの数字をきわめた社会保険事務所長の多くはその県の保険課で出世階段を着実に登っていったわけだ。これはこれで役人生活の哀しい性といってしまえばそれまでである。
舛添厚労相は「(改ざんを打ち明けている元職員は)犯罪行為の共同正犯。しかるべき対応をとりたい」(朝日新聞9月10日号)。良心ある職員の内部告発に脅しをかけた。政府与党は、「職員個人の問題に矮小化させたい思惑」(同紙)。
年金記録の改ざんは、職員個人の思いつきでできるほど簡単なものではなない。
年金行政の厳正な遂行をどう取り戻せるのか?組織の深い闇を糾すには、良心ある内部者による問題解明しかない。この日本の年金行政が真に国民のサーバントになるには、社保庁職員の自発的な改革意思の結集しかない。現場の職員は、兵隊である。改ざんを強要したのは組織の意思であり、社保庁トップの権力である。
社保庁幹部は「事務所の職員は貝になっている。実態が浮かび上がってこない」(同紙)というが、まさか、社保庁幹部が年金記録改ざんの実態を知らぬわけがない。もし、知らないというなら、この幹部氏、ほとんど現場を垣間見たこともない典型的な霞ヶ関チンタラ官僚なのであろう。
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