★今さら、社会保険庁が厚生年金記録改ざんに職員が関与しているかどうか調査するなどというのは、おとぼけもいいところである。「仙台市の元会社員の女性の場合、90年代に勤務していた都内の会社で、標準報酬が30万円だったのを1年半さかのぼって最低ランクの8万円(当時)に減額」「年金記録確認第三者委員会などで確認された標準報酬の改竄17件について、<略>、同じ事業所に勤務していた他の従業員157人の記録改ざんが確認」と報じたのは、朝日新聞9月8日号朝刊であった。
こうした年金記録改ざんの実際を最も良く知っているのは、社会保険事務所の職員である。徴収課長、適用課長、事務所長の経験者なら、社会保険行政の根幹にかかわる自明の前提の徴収率偽装であったことぐらい十分に知っていたわけだ。自らも手を染めて、後悔の念にかられているOBはいくらでもいる。
滞納処分をした事業所データは、まず改ざん偽装が当然あったと考えていいであろう。
社会保険事務所が実施する滞納処分は、まずその企業の預金、売掛金、設備、事務机などの差し押さえとなる。ところが、社会保険事務所の徴収職員がおっとり刀でかけつたところで、すでに銀行、暴力団、国税がしっかり抜き取っているわけだから、もぬけの空となる。
これでは、未収保険料と認定され、保険料未納率となってしまう。社会保険事務所の徴収職員は、うだつの上がらない奴ということでまず出世が遅れる。
そこで、その企業が倒産、破産の前に「取引」を持ちかけることになる。
滞納した時点にさかのぼって、全員を資格喪失させれば、その分の保険料はなかったことにしてやる。その代わりに、「偽装」資格喪失届に事業主印を押させることになる。これをもって、「ぜんそう」(全喪の意なのか?前喪の意なのか?)と、社保庁職員は呼んでいた。
または、企業が滞納した分のうち支払い能力がある範囲で払ってもらう。その代わりに、社員の標準報酬月額を改ざん、先にあった仙台市の女性のように「最低ランクの8万円(当時)に減額」という方法で債務の縮減、もしくは棒引をやる。
ここで、極めて重要なことは、事業主は、社員本人からは正規に届けられていた標準報酬月額をもとに保険料を強制的に給与天引きしていたことである。このお金はどこに行ってしまったのか?
恐らく、良く言えば事業主が運転資金に転用、悪く言えばネコババしたことになる。社会保険事務所はこうした経営者の悪事にも手を貸していたことになる。
さて、こうした厚生年金の記録改ざんは、総合型厚生年金基金加入の事業所である場合、社会保険事務所の徴収課と厚生年金基金とが共謀して行わないと偽装は完成しない。厚生年金は厚生年金基金と加入記録は一体の制度なのである。
さらに、その企業に顧問として社労士や税理士がいれば、すべてがなんらかの力を貸さないと成立しない偽装となる。
知らぬは社員ばかりで、60歳になって年金請求を行い、自分の平均標準報酬月額データを仔細に眺めないとまず気がつくことはない。年金の恐さはここにある。
社会保険庁は厚生年金全記録の標準報酬月額の訂正状況を調査し、「不自然な点が見つかれば本人に通知」するそうだ。しかし、同時に総合型厚生年金基金や過去に企業倒産や経営悪化から解散した単独連合厚生年金基金にも調査を波及させないと、この問題解明はまったく不完全なものとなる。
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