★基礎年金の構造は大変ややこしい。
その全額税方式か社会保険方式か、その財源問題とともに、そもそも基礎年金の成り立ちからして「曖昧模糊」とした制度である。
この4月に、この問題を実に簡潔明瞭に解説した本が出版された。
書名は「年金制度は誰のものか」(日経新聞出版社発行)。著者は西沢和彦さんで03年に発行された「年金大改革」の著者でもある。著者は社会保障審議会年金部会委員でもあるが、厚労省お墨付きの誤用学者ではない。著者は徹頭徹尾、厚労省の年金政策に懐疑的な姿勢を持ち、よりオープンに年金問題を論議することを主張してきた1965年生まれの若き泰斗である。
もし、今の20代・30代・40代の人々で自分が加入している年金制度に不信と不安を抱いているならば、是非、この本の購読をお勧めしたい。この世代が自分達の制度として年金の再構築を真剣に取り組む、またはそういう社会のリーダ達を支持するか反対するかの選択に際しても、「国民一人ひとりが年金改革を考えるための適当なガイドブック」を目指したと著者が言うように本書はその基礎と基準となる材料がすべて揃っている。本書を隅から隅まで読み通すには、多少の年金専門知識が必要となるが、この国の年金という病の原因と処方を計るための「解説書」としても、また、その都度読んでも十分に役立つ手引書となるであろう。

★本書「年金制度は誰のものか」は、全8章で構成されている。
まず、「8章年金改革の方向性」から読むと現在の年金改革のあるべき姿をイメージできる。
そこから、順次、次の各章を読む進むと、日本の年金改革に自分なりの「改革のイメージ」が描ける。
1章:日本に本当の基礎年金はない
2章:年金財政を考える
3章:04年改正の狙いと残された重い課題
4章:雇用者の年金
5章:国民にための執行機関改革
6章:日本には手の届かないスウェーデンの年金制度
7章:英国、カナダの年金制度―所得保障の中に年金
8章:年金改革の方向性
この書のなかで秀逸な解析は、1章「日本に本当の基礎年金はない」という著者の切実な訴求である。まず、基礎年金+厚生年金=二階建ての年金という「一般的概念」は本当に正しいのか?
著者は、「こうした説明には無理がある」と断じる。基礎年金を導入した『85年改正は二階建て年金を作ったのではなく、むしろ真の二階建て年金を棄却し、制度の分立を前提としたままで、村上清氏(筆者注:80年まで年金制度論を主導した論客でもあり、基礎年金制度の推進者の一人)の言葉を借りれば、フィクションとして基礎年金を導入したに過ぎないからである』。
そして絡み合った糸をほぐすように、「基礎年金複雑骨折」を解析していく。このなかで、著者の指摘で重要な点は次ぎの5点である。
1.社会保険方式論者が言うように、負担と給付が対応した制度ではなく、「不透明な関係」である。
2.同じ給付額なら同じ負担という意味での「水平的公平」を欠いている。その最たるものが、「第三号被保険者制度」である。
3.保険料徴収のモラルハザード。国民年金の拠出金算定対象者数からして未納者をはじいて算出される裏では、その拠出金を負担している厚生年金被保険者に大きな皺寄せをもたらしている。
4.基礎年金は「独立した財源」を持っていない。
5.日本の「年金制度」は「理解されないから成り立つ制度」である。
著者は、基礎年金の抜本的解決の方向として、1977年12月の社会保障制度審議会が提示した「基本年金構想」を探りあてる。
その財源は、「国民全部の所得かかる付加価値税」である。
基礎年金の税方式か社会保険方式か?今さら、はじまった論議でもないのである。これ自体、古くて新しい話であり、年金問題は厚労省の「年金100年安心プラン」の目くらましにあってきただけなのだ。社会保障審議会年金部会委員でもある西沢和彦氏の今後の孤軍奮闘は続くかも知れない。されど、著者・西沢和彦氏によって、我々は、ようやくにして問題の原点に立つことができたわけだ。
年金お助けBOOK 2008-2009年版
適格年金のやめ方