★企業年金連合会で過去の中脱者年金の未請求不払いが判明したのは07年9月であった。「今年(08年)2月末現在、減少したのは16万に過ぎない。124万人の未請求者のうち住所不明者が約90万人」と言うのは、企業年金連合会専務理事・矢野朝水氏(「年金情報08年4月7日号」)である。
★同氏は貴重な発言をしている。
住所が判明している人は30万人いる。しかし、未請求になっている理由をあげている。
1.在職中につき年金受給を繰下げたい=25%
2.死亡判明=20%
3.少額年金のため受給辞退=20%
4.手続きが面倒=15%
同氏はこの間、首尾一貫して「年金請求(申請)主義以外にどんな方法があるのか?」「社会保険庁の住所情報・・・住其ネット情報の活用が」企業年金の未請求、未払いの「切り札」と言って来た。
公的年金(5千万件)、企業年金中脱者年金(124万件1544億円)、厚生年金基金の退職年金(13万7千件970億円)、中小企業退職金共済(49万件366億円)、国民年金基金(8千件11億円)、確定拠出年金(8万件が資産放棄)。
日本の年金の記録不明、未請求、未払いは上記の如くである。はたして住基ネット情報で現住所が確認できれば「切り札」となるほど、単純な問題ではないようだ。
住基ネット情報を活用していない市区町村すらあるのである。
死亡するまで企業年金のあり所も知らない、面倒だ、こんな少ない年金はいらない、と言った人々が55%に達する年金制度がもつ「複雑で面倒臭さ」こそ問題である。
要するに「よく分からない制度」が多すぎるのかも知れない。自分の会社がどんな企業年金の「カタチ」なのかすら知らない社員がほとんどと言っても過言でない。大企業ですらそうである。
受給権者の立場からすれば、60歳になれば、国の年金請求一本で、シームレスに企業年金から確定給付企業年金、確定拠出年金、中退金、国年基金など、すべてに老齢・障害・遺族給付が「手続き完了」できるシステム構築こそ必要である。
なお、「英国は200ポンド(約5兆円)が未払いという。米国も、・・・<略>・・・200億~500億ドル(約2兆~5兆円)に上る」「世界のそうそうたる企業にも広く企業年金の未請求、未払いが見られることは、本質的にはガバナンス問題とは関係ない」(同誌より)と、矢野氏は企業年金連合会の年金統治(ガバナンス)に責任はないと言いたいのであろう。
これは、問題のすり替えである。
1>欧米先進国ですらこの体たらくであるから日本の企業年金の未払いは可愛いいものだと、言いたい気持ちはわかるが、欧米諸国の企業年金はどこまでも企業独自の退職給付金であり、請求しないのは本人の自己責任である。
筆者がその昔、欧米諸国の企業年金を視察して驚いたのは、確定給付企業年金の存在を知らない従業員、知らせていない企業があることである。恐らく、日本のような退職金の後払い、国の厚生年金の代行としての確定給付企業年金というより、欧米企業では長期勤続の「ご褒美=ベネフィット」という性質から来るのであろう。従って、日本の企業年金と欧米の企業年金はフラットに同列化できない。
2>企業年金連合会の中脱者年金は、国の厚生年金報酬比例部分を代行しているように、半分以上は、公的年金である。したがって、企業年金連合会の未払いは、公的年金の未払い、未請求である。
3>過去40年間、厚生年金基金連合会→企業年金連合会は中脱者の未請求・未払い問題に真剣に取り組んできたとは言えない。社保庁が住所を教えてくれないからという表立った理由はいい訳である。中脱者年金の未請求は、「おいしい」と思う当事者の言動を筆者は何度も聞いてきた。勿論、この当事者とは矢野氏のことでも、現在の連合会の職員達でもないが、そうした未請求を制度運営の「密かなリターン」とする堕落した業務思想がなかったかというと否定できないはずである。
繰り返し言うが、「年金」が「最後の一人、最後の1円まで払う」(安倍前首相)システムにすることは、簡単である。すべての人が15歳で「年金総合個人勘定(=社会保障コードでも良い)」を持つ。すべての年金制度をその総合勘定で通算管理する。すべての年金請求は、60歳になれば自動的にその総合勘定に基づいて自動的に支払われる。
それでも振込みできない、受取辞退がでるわけであるから、これは、生活保護基金でもつくり、すべての年金の未払金はそこでプールする方法がある。困窮した高齢者を最後に救うのは生活保護である。
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